要点まとめ
- AI推論コスト、2028年までに5倍以上増加の見通し — ガートナー
- トークンは安くなるのになぜ?「推論のパラドックス(Inference Paradox)」
- チャットボットからエージェントへ進むほどROI基準は高くなる
- 自組織の費用対効果基準を今こそ見直すべき時
ガートナー(Gartner)が月曜日に発表した報告書によると、企業のAI推論(inference)コストは2028年までに5倍以上増加すると見込まれています。企業のAI活用が単純な補助機能から多段階プロセスへと進化するにつれ、技術リーダーが負担すべきコストが増大するというものです。
ガートナーのシニアディレクターアナリスト、ウィル・サマー(Will Sommer)氏は報告書の中で、「AIの能力が世代を重ねるごとに、より多くの、そして概してより高価なトークンが必要になる」とし、「地平線の先に、信頼できる万能で低コストなモデルは見当たらない」と述べています。
トークンは安くなるのに請求額は膨らむ
ガートナーは現在のトークン経済を3つの要因で説明しています。第一に、基盤モデル(foundational model)のコスト自体は下落しています。第二に、この効率性の向上がかえって、より強力で高価なモデルを活用した高付加価値AIアプリケーションの追求につながります。第三に、こうした高度なAIワークフローは、初期モデルの単純なチャットボットとのやり取りよりもはるかに多くのトークンを消費し、これが全体の推論コストを押し上げます。
サマー氏は、「単純なチャットボットはクエリを読み取り解釈し、確率的に妥当な答えを素早く出せばよいが、AIエージェントは絶えず推論し、交渉し、自らに問いかけ続けなければならない」と述べ、単純なチャットボットとAIエージェントの経済性の違いを説明しました。ガートナーはこうした構造 — AIの総コストが、予測可能な価値へとつながる明確な道筋がないまま上昇し続ける現象 — を「推論のパラドックス(Inference Paradox)」と名付けました。
エージェント型AIに進むほどROI基準は高くなる
ガートナーの報告書は、エージェント型AIモデルや推論エージェントといったより高度なシステムでROIを達成するには、基本モデルよりもはるかに高い収益率が必要になると指摘しています。そうでなければ、企業は費用対効果を合わせるために、複雑なタスクをこなせるようモデルを高度に最適化する必要があるとサマー氏は述べました。同氏は7月のインタビューで、いずれの選択肢も可能だが、業務ワークフローの大幅な再構築が必要になると言及しています。
サマー氏は、「すべてのCIOはそれぞれ異なる優先順位と、組織にとって重要な事項を抱えている」とし、「CIOは組織の他のメンバーと共に、何が優先事項であり、AIがその課題解決において費用対効果の高い方法であるかを判断する必要がある」と述べました。
コスト予測の失敗は取締役会にまで及ぶ
コスト管理ソフトウェア企業マブリック(Mavvrik)の7月の報告書によると、組織の約半数がAI支出に関する予想外の事案を取締役会に報告した経験があると回答しています。ガートナーは今月初め、別の発表でAI最適化インフラサービス(大規模言語モデルの学習・運用を支援するコンピューティング)への支出が2026年末までに420億ドルへとほぼ倍増すると予測しました。また、サマー氏は7月のインタビューで、ガートナーが世界全体のトークン消費量を1日あたり約300兆個と推計しており、年間成長率は500〜600%に達すると明らかにしています。
韓国企業のAX(AIトランスフォーメーション)への示唆
ガートナーの指摘は、トークン単価の下落を根拠にAI導入コストを楽観視してきた組織への警告といえます。単価が下がっても、活用範囲やワークフローの複雑さが同時に増せば、総コストはむしろ膨らみかねません。特に、単純なチャットボット型機能からエージェント型自動化への移行段階にある組織は、コスト増加が線形ではなく、サマー氏が指摘したように世代を重ねるごとに急勾配になり得ることを前提に予算を設計する必要があります。
サマー氏が強調したように、AI導入の優先順位は組織ごとに異なり、結局のところ重要なのは「AIがこの課題を解決する上で費用対効果の高い方法であるか」という問いに自ら答えることです。AI転換を検討している組織であれば、導入しようとしている機能が単純な応答型なのか、多段階の推論を要するエージェント型なのかをまず見極め、後者であればトークン使用量の増加を前提にROI基準を改めて設定し直すことが順序といえるでしょう。
